研究概要 |
シスプラチンによるDNA損傷からのシグナル伝達により惹起される遺伝子発現及びクロマチン複合体会合分子プロファイルから新しい分子標的の探索を主たる目的として研究を進めた。 DNA損傷応答に関与するモデル遺伝子の解析 1.DNA損傷で発現誘導される転写因子ATF4が薬剤感受性に関わることをすでに報告しているが、その発現制御と薬剤感受性の分子機序をほぼ明らかにした。興味深いことに発現が概日リズムを制御する転写因子Clock/Bmalにより制御されていること、グルタチオン生合成とABCトランスポーター発現が薬剤感受性を規定していることを見出している。概日リズムと薬剤感受性の直接的な関連を示した初めての報告となる。 2.DNA損傷で発現誘導される転写因子ZNF143がシスプラチン感受性に関わることを見出した。耐性細胞で発現増強していること、肺がん細胞株で発現量とシスプラチン感受性が相関すること、siRNAによるノックダウンによりシスプラチン感受性になることを観察している。 3.シスプラチンによる細胞死に容積依存性クロライドチャンネルが関わることを報告した。 4.これまで解析を進めているYB-1に関して、肺がんで増殖マーカーであるPCNA発現とYB-1の発現が相関すること、乳がんにおいてパクリタキセルによりYB-1が核移行しP糖蛋白の発現を増強することを報告した。 DNAダメージサーベイランスシステムの基盤となる分子会合解析 1.損傷認識蛋白をコアとするクロマチン複合体の分子会合についてZNF143を解析した。その結果TBP, p73,GATA3,HR23Aとの会合を新たに見出した。現在、その生物学的意義及びDNA損傷の有無による会合形態の変化を検証している。 薬剤感受性に関連する転写因子とその分子会合についてこれまでの成果と将来構想をレビューにまとめ報告した。
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