研究課題
癌骨転移の成立、進展には破骨細胞による骨吸収が深く関わっている。今回、破骨細胞選択的にアポトーシスを誘導するリベロマイシンA(RM-A)の骨転移抑制効果を、ヒト小細胞肺癌多臓器転移モデルマウスを用いて検討した。その結果、RM-Aは肺癌細胞の骨への転移を有意に抑制していた。また、RM-A投与マウスの骨転移巣において、破骨細胞が減少し、アポトーシス細胞が増加していた。これらのことから、RM-Aは癌骨転移の治療薬として有用であることが示唆された。また、転移関連因子として、金属依存性マトリックス分解酵素阻害因子であるreversion-including cysteine rich protein with Kazal motifsの糖鎖修飾に着目した。このタンパク質の1次配列からは5ヶ所の糖鎖修飾が予想されたが、変異体(アスパラギン残基をグルタミン残基に置換)やグリコシダーゼを用いた解析から、4箇所のアスパラギン残基が糖鎖修飾されていることが分かった。いずれの糖鎖修飾も、GPIアンカーとして細胞外膜への局在には必要なかった。一方、金属依存性マトリックス分解酵素-9分泌抑制能や金属依存性マトリックス分解酵素-2の活性化抑制に必要であった。さらに、この遺伝子の過剰発現細胞ではがん細胞の浸潤能が低下するが、糖鎖修飾がされない変異体を細胞に発現させるとがん細胞の浸潤能は低下しなかった。これらの結果より、このタンパク質の糖鎖修飾によっても金属依存性マトリックス分解酵素の機能発現、さらにがん細胞浸潤能が調節されていることが明らかになり、新たながんの分子標的となる可能性が示唆された。
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