研究課題/領域番号 |
17016080
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 稔 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 主任研究員 (80191617)
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研究分担者 |
八代田 陽子 独立行政法人理科学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (60360658)
西野 憲和 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (40145165)
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キーワード | エピジェネティクス / スプライシング / ヒストン脱アセチル化酵素 / HDAC阻害剤 / ヒストンメチル化酵素 / HDAC6 / SF3b |
研究概要 |
エピジェネティックな遺伝子発現の調節に中心的役割を果たしているのがヒストンのアセチル化に代表されるクロマチンの構造・機能調節である。最近、これらの調節機構が細胞のがん化に重要な役割を果たすことが明らかになってきた。本研究では、特にヒストンアセチル化、メチル化を中心にクロマチン制御に関わる因子の同定とその阻害剤の開発を行い、作用機構を解明する。今年度は、特にクロマチンの構造・機能に影響を与えることで転写を活性化し、細胞周期を停止させると考えられる抗腫瘍活性物質FR901464の標的分子の解明を中心に研究を進めた。その結果、FR901464は細胞周期阻害タンパク質p27の発現を上昇させること、その際、C末端が欠失した短いp27(これをp27*と呼ぶ)を同時に生産することが明らかになった。FR901464の構造活性相関研究を行ったところ、メチルケタール体が安定で高活性を示すことがわかり、Spliceostatin A(SSA)と名付けた。これにビオチンを導入したSSAプローブを合成し、結合タンパク質を同定したところ、意外にもスプライソソームのコンポーネントの一つであるSF3b複合体が得られた。SF3b複合体が標的であることは、RNAi実験によって証明し、SSAによってSF3bが阻害されるために細胞内のスプライシングが抑制されることを明らかにした。FR901464やSSAによって誘導されるp27*は、P27mRNA前駆体が翻訳され、C末端側がイントロン配列と置き換わったものであることが明らかになった。FR901464およびSSAは世界初のスプライシング阻害剤であり、スプライシングが抗がん剤の標的として重要であることがはじめて示された。また、改良を重ねてきた環状テトラペプチド骨格を有するHDAC阻害剤の毒性試験を行い、酵素特異性を担う環状テトラペプチド部分の構造の改変により、大幅な毒性(最小致死量)の軽減、肝機能障害性の消失が可能となり、低毒性HDAC阻害剤の開発の基礎が確立された。
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