研究課題/領域番号 |
17016080
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 稔 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 主任研究員 (80191617)
|
研究分担者 |
八代田 陽子 , 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (60360658)
西野 憲和 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 教授 (40145165)
|
キーワード | エピジェネティクス / ピストン脱アセチル化酵素 / ヒストンメチル化酵素 / スプライシング / SUMO化酵素 / HDAC阻害剤 / SF3b |
研究概要 |
エピジェネティックな遺伝子発現の調節に中心的役割を果たしているのがピストンのアセチル化に代表されるクロマチンの構造・機能調節である。最近、これらの調節機構が細胞のがん化に重要な役割を果たすことが明らかになってきた。本研究では、特にヒストンアセチル化、メチル化等のヒストン翻訳後修飾を中心にクロマチン制御に関わる因子の同定とその阻害剤の開発を行い、作用機構を解明することを目的とする。本研究で300種類以上の新規HDAC阻害剤を合成し、その中から阻害剤としての強度や細胞での有効性を指標にKy-2という物質を選択し、さらなる検討を行った。その結果、Ky-2は従来の環状テトラペプチド系HDAC阻害剤で最も強力であったCHAP31と同等の活性を持ちながら、マウスの最大耐用量(MTD)120mg/kg以上で重篤な副作用を示さなかった。一方、CHAP31のMTDは30mg/kg以下であった。さらにヒト胃がんモデルのヌードマウスでの検討を行ったところ、ほとんど体重減少を引き起こすことなく、CDDPを超える抗腫瘍活性が認められた。また、 HDAC阻害剤の細胞での作用をリアルタイムで可視化することのできる蛍光プローブの開発を行った。これは2種類の蛍光タンパク質、ヒストンH4、アセチル化ヒストン結合タンパク質をリンカーで直列につないだものであり、ヒストンH4がアセチル化されるとコンフォーメーションが変化し、蛍光共鳴エネルギー移動が変化するという原理に基づく。この方法により、初めて生きた細胞でのヒストンアセチル化の変化を観察することが可能となり、各種HDAC阻害剤の細胞内HDAC阻害のキネティクスが明らかになった。
|