研究課題/領域番号 |
17016085
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
上原 至雅 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (50160213)
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研究分担者 |
深澤 秀輔 国立感染症研究所, 生物活性物質部, 室長 (10218878)
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キーワード | 足場非依存性増殖 / K-ras / hypothemycin / MEK-ERK経路 / B-RAF / anicequol / 25-hydroxycholesterol / tamoxifen |
研究概要 |
親水性ポリマーであるpoly(2-hydroxyethyl methacrylate)でコートした96穴プレートを用い、ヒトがん細胞株の足場非依存性増殖を選択的に抑制する物質を検索した。活性物質として単離精製したresorcyclic acid lactone polyketideのhypothemycinの作用を解析した。 hypothemycinはMEK、ERKを含む46種のプロテインキナーゼに保存されているcysteineに共有結合し、プロテインキナーゼを不活性化することが報告されている。しかしKRASでトランスフォームした繊維芽細胞の形態変化や、PKDなどhypothemycinの標的となりうるcysteineを持つ他のキナーゼに対する影響から、hypothemycinは細胞内ではかなり選択的にMEK-ERK経路を阻害すると予想された。hypothemycinはMEKだけでなく、さらに下流のERK、p90RSKも阻害する。hypothemycinに感受性の高いがん細胞では、MEK阻害剤とERK阻害剤の相乗効果が見られたことから、同一のシグナル伝達経路を1ヵ所だけでなく、複数箇所で遮断するとより有効である可能性が示された。またBRAFが変異しているがんは、MEK-ERK経路への依存度が高いと考えられるが、BRAFに変異があるがん細胞とKRASに変異があるがん細胞に対するhypothemycinの影響を比較すると、BRAF変異がん細胞の感受性が高い傾向が見られた。しかしBRAF変異があってもhypothemycinや他のMEK阻害剤に対する感受性が低いがん細胞もあることから、MEK-ERK経路阻害による影響には他の要因も関与していると考えられ、解析を行っている。anicequolと25-hydroxycholesterolはともにDLD-1に対する足場非依存的増殖阻害活性をもつが、どちらの化合物もtamoxifenと相乗効果を示す事が分かった。今後、他にも相乗効果を示す化合物を探索し、メカニズムの詳細を解析する。
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