1 抗がん剤内包ミセル体:タキソール(PTX)内包ミセル体NK105に関しては、放射線との併用効果について検討した。マウスLewis Lung Carcinoma移植腫瘍において、臨床用PTXあるいはNK105をPTX換算45mg/kg静注後24時間後に放射線を2Gy/分腫瘍部に照射した結果、NK105群において有意な抗腫瘍効果が得られた。フローサイトメトリー解析からNK105のほうがPTXに比べて、G2/Mアレストが強いという結果が得られ、それ故に放射線増感作用が増強されたと考えた。SN-38内包ミセル体NKO12については、in vivoにおいてCPT-11に比べ、著しい治療域の拡大を認めた。主な原因として、NK012の腫瘍集積性が著しく上昇したことと、NK012(30mg/kg)とCPT-11(66.7mg/kg)の比較においてフリーSN-38の血漿AUCがNK012のほうで14倍高いにも関わらず、腸管におけるフリーSN-38のAUCがほとんど変わらないこと、などの結果によると考察された。また通常では抗腫瘍効果が低下するVEGF強制発現ヒト小細胞肺がんにおいて腫瘍径が1.5cmという巨大腫瘍で治療実験を開始したところ、NK012(15mg/kg)投与群で全腫瘍の消失が認められた、一方CPT-11(66.7mg/kg)投与においては、わずかな抗腫瘍効果しか認められなかった。 2 遺伝子デリバリー研究:現在の遺伝子キャリアでは局所投与以外に臨床導入は不可能という考えのもと、局所投与が有意義なモデルとして脳腫瘍、肝がんへの動注法、卵巣がんでの腹腔内投与、表在性膀胱がんモデルとしての膀胱注入実験モデルを確立した。ヌードマウスあるいはヌードラットにおいて、それぞれの臓器に対応するヒトがん細胞株にルシフェラーゼ発現プラスミドを導入し、各臓器へ移植後、1週目にルシフェリンを腹腔内投与し、photon imagerにて移植腫瘍の状況を定性的、定量的に評価するシステムを構築した。
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