本研究では、担がんマウスで増加するGr-1陽性CD11b陽性骨髄球系抑制性細胞における抑制性レセプターの役割を明らかにし、がん免疫応答における抑制性シグナルの役割を明らかにすることを目的とし、主として、以下の項目について検討を行った。(1)がん組織内に集積するGr-1陽性CD11b陽性骨髄球系細胞における抑制性レセプターの発現、(2)骨髄球系細胞に特異的に発現するる抑制性レセプターLy49Qの役割、(3)自己認識型抑制性レセプターに対する抗体が骨髄球抑制性細胞の機能に与える影響、(3)抑制性レセプターLy49Qの樹状細胞、骨髄球系細胞における役割と意義、(4)抑制性レセプターLy49Qの恒常的不活性型分子を発現するマウスを用いた造腫瘍性の解析。その結果、骨髄球系細胞において、PIR、SIRP、CD94などの自己認識型抑制性レセプターの発現レベルは、正常好中球と担がんマウス骨髄球系抑制性細胞の間ではほとんど変わらないが、Ly49Qのみで発現の低下が認められること、この分子の恒常的不活性型を発現するマウスではB16による腫瘍形成の遅延と生存期間の延長が認められることを見出した。さらに、Ly49Qがfocal adhesion kinaseの活性を抑制することにより、パキシリンの細胞内局在を制御していること、その結果としてGr-1陽性CD11b陽性骨髄球系細胞とプラスマ細胞様樹状細胞の細胞接着と細胞伸展、およびインテグリンに依存したケモタキシスを制御していることを見出した。現在抑制性レセプターによるインテグリンの機能制御の分子機構の解明と、がん組織へのGr-1陽性CD11b陽性骨髄球系細胞の集積機構への関与について解析を進めている。
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