研究概要 |
造血器腫瘍に対する同種造血細胞移植後の再発を予防・治療して治療成績を向上させるために、血液系細胞特異的マイナー(組織適合)抗原は選択的抗腫瘍効果をもたらしうる標的抗原として有望である。HLAや抗原頻度から現在のカバー率は3割強程度であり、さらに多くの日本人患者を対象とできるように、新規マイナー抗原を同定することを目的とする。 1.HapMapリソースを用いた新規マイナー抗原の同定:昨年度報告したゲノムワイドな同定法ではタイピングしたEBV不死化B細胞(LCL)から抽出したDNAのプール化、SNPアレイ解析が必要であった。これに対し、本年度はHapMapに登録されたLCLの細胞傷害性試験結果と各LCLのSNP型データの関連解析を行うことで、迅速に責任SNPを決定する方法を開発した。HLA-A^*0206,B^*4001拘束性の細胞傷害性T細胞(CTL)にてそれぞれ45、72種類のLCLをタイピングし相関解析を行ったところ、前者では染色体19q13.3の位置に存在するSLCIA5遺伝子、後者では4q13.1に位置するUGT2B17遺伝子まで絞り込むことができ、CTLエピトープも同定された。両CTLとも傷害性試験では血液系細胞特異的と考えられたが、遺伝子の発現は比較的広範囲であったため、選択的抗腫瘍効果の標的となるかを検討中である。 2.マイナー抗原を標的とした移植後再発・再発ハイリスク造血器腫瘍患者に対するマイナー抗原ペプチドワクチン臨床試験:T細胞リンパ腫の再発例およびハイリスク急性骨髄性白血病の2患者に対して各々ACC-1^c、HA-1のペプチド(第一段階量30μg)を投与した。現在、免疫モニタリングを実施中である(詳細は全試験終了時に公開)。
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