武田研究室と工藤研究室で得られた成果のうち、代表的なものは以下である。 (1)メダカ左右軸異常変異体ktuの原因遺伝子の機能解析を行った。Kntは繊毛、鞭毛のダイニンアーム形成に必須な新規タンパク質であることが判明した。また、フライブルグ大学の研究者と共同で、繊毛病の約100家系をスクリーニングしたところ、2家系においてヒトKTU遺伝子に変異を見いだした。メダカ変異体の解析より、ヒト遺伝病の新規原因遺伝子を見つけることができた。(2)肝臓の後期発生に異常を示すメダカ変異体aA7の原因遺伝子は鉄代謝に必須なABCトランスポーターであるabcb7をコードしていた。この変異体の肝臓は、いわゆる脂肪肝の表現型を示している。マイクロアレイによる解析により、aA7ホモ変異体と正常胚(孵化1-2日目)の肝臓で、鉄代謝に関係する多くの遺伝子の発現に差があることが判明した。実際abcb7はヒトの貧血性の遺伝病の原因遺伝子として報告がある。(3)メダカ骨発生様式を調べるために、硬節に特異的な発現を示すTwistトランスジェニックメダカ、骨芽細胞特異的な発現を示すオステオカルシントランスジェニックメダカを作成し、細胞の行方をトレースした結果、硬節由来の骨芽前駆細胞は脊索の石灰化を促し、脊索周囲の石灰化を亢進するとともに椎間板領域に収束し、骨芽前駆細胞を供給し続けることにより脊椎骨が成長することが明らかになった。(4)ゼブラフィッシュではメカニカルストレスに関連する筋間中隔の形成と筋繊維の発達に機能しているペリオスチンは、マウスにおいてコラーゲンのクロスリンクを制御することにより、コラーゲン繊維構造形成に寄与することが明らかになった。さらにマウス心筋梗塞モデルマウスでは、梗塞時の心筋再生を促すマトリックス形成に必要な繊維芽細胞の移動に、ペリオスチンはインテグリンを介して機能していることが明らかになった。
|