研究概要 |
メダカ変異体について2つの研究室で以下のような成果が得られた。 武田研究室 : (1) 今年度は特に左右軸変異体ktuの解析が進み、その成果を論文発表した(Omran et al.,2008)。ktu変異体は繊毛の運動性が喪失するもので、研究の過程でヒト遺伝病である繊毛病の新しい原因遺伝子が判明した。 (2) 脂肪肝を発症する変異体nmkは、ABCトランスポーターの一つabcb7が原因遺伝子であった。マクロアレイを用いた発現解析の結果、肝臓で鉄と脂肪代謝関連の遺伝子の発現に異常を見いだした(Miyake et.al., 2008)。一方、体節の分化異常によりからだの外形(体型やヒレの形)が変化するメダカ自然突然変異体Daの解析も進めた。Daの原因領域はすでにZicl, 4遺伝子が存在する領域に絞り込まれていたが、ゲノム支援班の配列決定により、この領域に50Kb以上のDNA断片の挿入が存在することがわかった。DNA断片の挿入によりZic遺伝子の体節特異的エンハンサーの活性が落ちた可能性が高い。 工藤研究室 : (1) メダカ骨格異常変異体3種類の原因遺伝子はそれぞれwnt family, クロマチンリモデリング因子BRPF1、小胞体因子secDであり、脊索から椎骨形成、頭蓋骨からヒレ軌条形成について分子レベルで明らかになった。BRPF1についてはさらに同じクロマチンリモデリング因子ファミリーであるMozについてそのノックアウトマウスで調べたところ、メダカ変異体と同様の表現型が観察されるとともに、Hox遺伝子ファミリーの転写制御に関与することが明らかになった。以上からBRPF1・FMozの機能は脊椎動物共通であることが明らかになった(Hibiya et al., 2009)。
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