繰越により本年度の実験は武田研究室だけで行われた。以下の2つの実験を実施した。 1.ha変異体原因遺伝子の同定と機能解析:原因遺伝子は脂質合成に関与すると思われる新規遺伝子であった。耳胞で発現して、耳石を構成するタンパク質が細胞から分泌される過程または分泌後に耳石タンパク質が集合する過程に必須であることが判明した。現在論文投稿の準備中である。 2.Da変異体の原因遺伝子Zic遺伝子の体節エンハンサーの絞込み-Zic遺伝子のBACトランスジェニック法による体節エンハンサーの特定:BACトランスジェニックの効率が格段に向上し、zic遺伝子の下流8Kbから50kbにかけて存在する高度に保存された領域に体節での発現をドライブするcis領域が存在することが判明した。その真価適宜に関する考察とともに論文を作成中である。また、zic遺伝子を中心としたネットワークを明らかにする目的で、Daと野生型胚体節組織(200個体程度)からRNAを抽出し発現遺伝子群の量的変動を比較解析した。マイクロアレイにより、複数のzic遺伝子の下流と思われる遺伝子が単離され、今後の研究につながる成果が得られた。 さらに我々は、Da変異体において体幹部表層の背腹パターン異常が体節の異常によるものであることを示すため、従来難しいとされてきた小型魚類における体節移植法をメダカで新たに確立し、野生型由来の体節をDa変異体に移植する実験を行った。移植により黒色素胞の背中の分布パターンや背ビレの形態が野生型に表現型回復したことから、体節がzic1/zic4を介して体幹部表層の背側化を支配しているという新規のメカニズムの存在が明らかとなった。
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