本研究では、シナプス可塑性を題材にして行った。 シナプス可塑性は、ニューロンの電気的発火信号(スパイク)を他のニューロンへ伝えるシナプスの伝達効率(シナプス結合強度)が変化する現象であり、記憶や学習の分子的基盤である。特に、スパイクタイミング依存シナプス可塑性(STDP)は、スパイクの送り手であるプレニューロンと受け手であるポストニューロンの発火タイミングに依存してシナプス結合強度が変化する現象である。本年は、STDPのシグナル伝達の詳細なシミュレーションモデル(詳細STDPモデル)を作成してSTDPを導くにはNMDA受容体の新規アロステリック性が論理的に必要であることを見出した。さらに、現在NMDA受容体のアロステリック性の実験による検証を開始した。また、STDPがニューロンネットワークの学習をどのように実現させているかを、網膜・視蓋経路のモデルを用いた解析に着手した。さらに、小脳LTDにおいても同様にモデル化の解析を行ってきたが、理論的な予測を行ってきた。本年は、実験によりCa^<2+>上昇によるLTD制御は漏れ積分器により制御されていることも見出した。
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