研究課題/領域番号 |
17017019
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阿久津 達也 京都大学, 化学研究所, 教授 (90261859)
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研究分担者 |
五斗 進 京都大学, 化学研究所, 准教授 (40263149)
望月 敦史 理化学研究所, 望月理論生物学研究室, 主任研究員 (10304726)
時田 恵一郎 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00263195)
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キーワード | 生物情報ネットワーク / スケールフリー / タンパク質相互作用 / タンパク質ドメイン / 代謝ネットワーク / 遺伝子発現 / 遺伝子ネットワーク / 進化動力学モデル |
研究概要 |
平成21年度は以下の成果を得た。 1、ネットワーク構造生成に関する研究 複数ドメインからなるタンパク質の進化モデルを構築した。具体的には、タンパク質をコードする遺伝子の重複と突然変異に基づく進化モデルにドメインの融合や内部重複を加えた進化モデルを構築した。理論解析の結果、ドメインの出現頻度はべき乗則に従うが、個々のタンパク質に含まれるドメインの種類は指数分布に従うという興味深い性質が得られた。この性質はデータベース解析により知られていたものであったが、本研究により理論的にも導くことができた。 2、ネットワーク構造解析に関する研究 KEGGを用いたネットワーク解析の応用として、循環器疾患のサンプルから得られた遺伝子発現データを用いたネットワーク解析を行い、パスウェイと文献のネットワークから特徴的な遺伝子を抽出し、疾患の原因遺伝子の特定を試みた。 3、ネットワーク動的挙動解析に関する研究 ネットワーク構造と力学の定常状態とを結びつける理論を、大幅に進めた。ネットワークの構造から定まるダイナミクスの性質として、「定常状態の不和合性」と「ダイナミクスの独立性」と名付けた2種類があることを示した。これらをホヤの遺伝子ネットワークに適用することにより、(1)複雑なネットワークからダイナミクスを特徴づける少数の分子を抜き出し、ネットワークの単純化を行った。(2)さらに細胞分化後の遺伝子発現パターンを定常状態と見なすことによって、ネットワークの形と定常状態との間の矛盾を明らかにし、そこから未知の制御の存在を予測した。 また、ウィルスや言語などの速い進化を考慮したより一般的な進化モデルに対する統計力学的研究を行い、適応が促進する多様性や安定性、さらには多様な解から一様な解への相転移を初めて解析的に証明した。また、集団遺伝学に基礎を置く生態系における中立モデルの解析を行い、群集の中立性が成り立つ条件を明らかにした。
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