まず、タグの改良により、従来のシステム以上に高感度に活性型Cdc42を検出する測定系の確立に成功した。また、Rac1特異的な結合配列を見い出し、培養細胞系において、内在性Rac1の活性化部位の可視化に成功した。高性能の蛍光標識やELISA法の採用に関しては、予備的な条件検討を行ない、近い将来応用できる手掛かりが得られた。一方、活性型Rasファミリー蛋白質の可視化法の確立に関しては、まず第一段階として、Rasに対しては結合能を示すが、類縁のRap1に対しては親和性が低い標的分子の結合ドメインを用いて、活性化Rasのin situ可視化の条件検討を進めてきた。さらに、平成17年度に確立した内在性Rac1の活性化部位の可視化技術を筋細胞に応用し、インスリン刺激に応答した糖取込み誘導のシグナル伝達系におけるRac1の機能解析を行なった。筋細胞株L6をインスリン刺激すると、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)依存性および非依存性のシグナル伝達系を介して、Rac1の活性化が認められた。Rac1の活性化されている細胞内領域を解析したところ、PI3K依存性の活性化は細胞表面のラッフル膜上で起こり、PI3K非依存性の活性化は細胞内膜系で起こることが明らかとなった。さらに、PI3K依存性の細胞膜表面でのRac1の活性化を制御するグアニンヌクレオチド交換因子を同定し、その恒常的活性型は細胞膜表面のRac1を特異的に活性化することが、今年度新たに開発した活性化Rasのin situ可視化法により示された。
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