研究概要 |
研究代表者は、強制発現ベクター挿入系統を用いて,翅原基で強制発現させ、その表現型を画像データとして収集した。画像データの解析では、支脈の長さ以外に、翅の細毛数をカウントする方法を確立した。翅の大きさをあらわす指標として、前後軸方向、遠近軸方向、およびそれらの比をとり、約2,000系統の中から,トップ50を選び出し、それぞれに系統において強制発現された遺伝子をゲノムの挿入位置から推定した。大きくする方向に働いた遺伝子の中には,体の大きさに影響を与えることがすでにわかっているインスリンシグナル経路のコンポネントが含まれていた。 分担者の林はGene Searchスクリーンによって得られた上皮形成に関わる因子IKKεの解析を行った。その結果IKKεがカスパーゼシグナリングを通じて細胞骨格系を制御し、細胞の形態形成と分化を制御する新規なメカニズムを担う事が明らかになった。また新規核内因子ChnがEGFRとNotchの下流において働く転写抑制因子であること、Chnが哺乳動物で知られていた神経分化抑制分子NRSFに類似な働きを持つことを示した。 分担者の上田は、約7,000遺伝子に対応するRNAi系統を樹立した(13,600系統)。このうち、4,700遺伝子について(sd-GAL4で)翅の形態変化を調べたところ、1,460遺伝子(31%)では致死や極度の形態異常を示し、本研究における画像解析に適しないことが判明した。現在、GS系統を用いた解析から翅の大きさに異常を示すものが約500系統存在する。これらの遺伝子に対応するRNAi系統を選択し、ノックダウン表現型のデータを取得する作業を開始した。
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