単一アミノ酸リピート構造は特定の立体構造を形成しない領域(disorder領域)を取りやすく、disorder領域を取る単一アミノ酸リピート構造は大きく3つのアミノ酸残基グループに分けられること、タンパク質中のdisorder領域の割合分布は「霊長類の中で変異が見られる"単一アミノ酸リピート構造"」群において他の2群と大きく異なっていることから、disorder領域の割合が塩基置換へ及ぼす影響を探った結果、ある特定の割合となるdisorder領域からなる単一リピート構造をもつ遺伝子では非同義塩基置換速度が統計学的に極めて高い確率で有意に高くなっていた。これは、単一アミノ酸リピート構造の変化がそれを包含するタンパク構造へ影響を及ぼしていることを意味している。また、脳に特異的に発現しているBrain-2転写因子の単一アミノ酸反復配列のうちで哺乳動物に特徴的な複数の単一アミノ酸反復配列のみを人為的に完全欠失させたノックインマウスに関して、不致死であるノックイン・ホモ個体においてリピート欠失の雌ホモ個体で基本的行動指標としての明期の自発活動量が統計学的に有意に低いこと、エタノール誘発性睡眠時間の測定結果から脳内のドーパミン量が低くなっていることを明らかにした。行動解析の結果からドーパミン代謝経路の関与が強く示唆されたため、同代謝経路の律速段階酵素の免疫組織学的分布ならびに発現量に関する定量的解析をおこなった。その結果、ノックイン・ホモ個体の雌において統計学的に有意な発現量変化が明らかとなった。さらに、これに呼応するように、同物質に対するレセプターの発現量に同調的変化が同じく統計学的有意差をもって観察された。加えて、哺乳動物に固有とされている重要な行動様式のへの影響が雌特異的行動として観察された。
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