研究概要 |
研究代表者らはすでにLysidine合成酵素遺伝子(tilS)の同定[Mol Cell,12,689-698(2003)]しているが、今年度はその機能解析に成功した[Mol Cell,19,235-246(2005)]。LysidineはtRNA^<Ile>のアンチコドン1字目に位置するCの修飾塩基であり、修飾によってコドン認識がAUG→AUAと変化し、さらにはtRNAのアミノ酸受容能がMet→Ileへとスイッチすることが知られている。tilSはすべてのバクテリアに共通に存在する必須遺伝子であり、抗生物質の新規ターゲットとして阻害剤の探索が期待されている。 更に、リボヌクレオーム解析により、2チオウリジンの生合成に関与する5つの新規遺伝子の同定に成功し、2チオウリジンの生合成の過程において、これらのタンパク質が連携して硫黄原子をリレーするメカニズムを解明した[Mol Cell,21,97-108(2006)]。 また、RNAエディティングの探索に関しても、公開されている約500万のESTデータベースとヒトゲノム配列の比較から絞り込まれたA/G置換部位から、ESTの由来臓器や組織の情報を加味することで、A→Iエディティング候補部位の絞込みを行った。また、mRNA中のイノシンの同定に関しては、イノシン特異的な化学修飾とRT-PCR法を組み合わせたICE法(特許出願済)を確立した。この手法の利点は、微量なtotal RNA(約10ng)で解析が可能である、SNPとの判別が確実にできる、部分的なイノシン修飾の解析が可能、偽遺伝子やマルチコピーに由来する偽シグナルとの判別が容易である、などの数々の利点を有している。ICE法は微量RNA中に含まれるイノシンを迅速かつ確実に同定する方法として他の手法の追随を許さない。実際にこの方法を駆使し、これまでにヒト脳mRNA中に含まれる236箇所の新規イノシン化部位の同定に成功した。
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