研究課題
本年度は、大腸菌2チオウリジンの生合成機構および、触媒反応の詳細な分子メカニズムを生化学的および構造生物学的なアプローチにより解析を行った。新規の硫黄リレータンパク質群の硫黄リレー機構の解析と、アデニレート活性中間体を介した2チオ化反応の分子メカニズムの解明が特に重要な成果として挙げられる。また、酵母においては、yWの生合成に関与する新規遺伝子4つを発見し、部分的な再構成に成功した。この際に、メチル供与体として知られているS-アデノシルメチオニンを基質として用いるアミノカルボキシプロピル化という新しい酵素反応を見出した。さらに、最近、リボソームRNAの修飾遺伝子を探索するシステムを構築し、4つの新規遺伝子を発見した。また、古細菌tRNAの解析から、遺伝暗号の解読に関わる新規修飾塩基を同定することにも成功している。現在、その修飾酵素を探索している。精子形成に関わるマウス由来piwi-interacting RNA(piRNA)の解析を行い、その3'末端がほぼ完全に2'-O-メチル基で修飾されていることを見出した。イノシン化部位の同定に関しては、イノシン特異的な化学修飾とRT-PCR法を組み合わせたICE法を用いて、探索を行っている。この手法の利点は、微量なtotal RNA(約10ng)で解析が可能、SNPとの判別が確実にできる、部分的なイノシン修飾の解析が可能、偽遺伝子やマルチコピーに由来する偽シグナルとの判別が容易、などの数々の利点を有している。公開されている約500万のESTデータベースとヒトゲノム配列の比較から絞り込まれたA/G置換部位をA→Iエディティング候補部位とし、解析を継続している。これまでに、約1770箇所の新規イノシン化部位の同定に成功した(今年度は約1400箇所の増加)。ほとんどのイノシン化部位が部分修飾であったこと、mRNAの3'UTRにクラスターとして見出されること、組織特異的にイノシン化されている部位が多く存在することなどが、新たな知見として得られた。このうちの約30%がESTの比較解析から、A/G置換部位として情報科学的に予測可能な部位であるが、約70%がcDNAの解析からは、見出されていない完全な新規部位であったことから、ヒトRNA中には、2万箇所以上のイノシン化部位が存在すると見積もられる。
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