研究課題
酵母遺伝子破壊株のリボヌクレオーム解析により、2チオウリジンの生合成に関わる5つの遺伝子、YOR251c、UBA4、URM1、NCS2、NCS6を発見している。今年度は、これら遺伝子の機能解析を行い、修飾反応の詳細な生合成機構を生化学的、遺伝学的なアプローチにより解析を行った。その結果、YOR251cがNFS1を活性化し、Cysのチオール基を引き抜き、persulfiedとして、YOR251cに受け渡すことを明らかにした。さらに、UBA4が、ATPを用いURM1のC末をアデニル化することで活性化し、YOR251cのpersulfiedを転移する反応を見出した。URM1のC末はthiocarboxylateの形態で活性化され、この硫黄原子がNCS2とNCS6が関与する2チオウリジンの形成反応に用いられると考えられる。この硫黄原子の運搬機構は、我々が以前、大腸菌で見出しているTusタンパク群による硫黄リレー機構(Mol Cell,2006)とは明確に区別されるものであり、2チオウリジンの生合成が生物種によって全く異なるメカニズムによって担われていることが明らかとなった。また、大腸菌リボソームRNAの修飾に関与する5つの新規遺伝子を発見した。イノシン化部位の同定に関しては、公開されている約500万のESTデータベースとヒトゲノム配列の比較から絞り込まれたA/G置換部位をA-to-Iエディティング候補部位とし、ICE法を用いたゲノムワイドな解析を行っている。昨年度は、112遺伝子に対し、パイロット的な解析を行った結果、約1770箇所の新規イノシン化部位の同定に成功した。今年度はエディティングデータベースの本格的な構築を目指し、ゲノム全体におけるイノシン化部位の網羅的同定に着手した。501領域について解析を行った結果、イノシン化部位4401箇所を同定し、その登録作業を完了した。この中でESTの比較からA/G置換部位として観測された1578箇所のうち、実際にイノシン化部位であることが判明したものが、わずかその約半数の805箇所であった。このことは、EST上で見られるA/G置換部位の半分はSNPやシーケンスの間違いであることを示唆している。さらにESTの比較からA/Gの置換が認められない完全に新規のイノシン化部位は3596箇所であった。最終的には2万箇所以上存在するであろうイノシン化部位の同定を目指す。
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