研究概要 |
本研究ではRNAの機能発現に必要な修飾構造の全体像の解明をめざしている。大腸菌tRNA^<Met>のアンチコドン1字目にはN^4-アセチルシチジン(ac^4C)が存在し、この修飾はAUGコドンの厳密な認識に寄与している。我々はリボヌクレオーム解析によりtRNA^<Met> cytidine acetyltransferase(TmcA)を同定した(EMBO J, 2008)。TmcAはN末端にRNAヘリケース様のドメインがあり、C末端にアセチルトランスフェラーゼを有している。試験管内のアセチル化実験を行ったところ、TmcAはアセチルCoAを基質とし、ATP依存的にac^4Cを形成することを見出した。また、北大理学部の田中勲教授との共同研究によりTmcAの結晶構造を決定したところ、RNAヘリケースドメインとアセチルトランスフェラーゼの協調的な作用によるac^4C形成の分子基盤を解明した(EMBO J, 2009)。イノシン化部位の同定に関しては、公開されている約500万のESTデータベースとヒトゲノム配列の比較から絞り込まれたA/G置換部位をA-to-Iエディティング候補部位とし、ICE法を用いたゲノムワイドな解析を行っている。昨年度より、エディティングデータベースの本格的な構築を目指し、ゲノム全体におけるイノシン化部位の網羅的同定に着手した。これまでに、約90%を超える候補領域の解析が終了し、すでに20, 000箇所を超えるイノシン化部位を特定している。解析した領域内には情報科学的に予測されたイノシン化部位が約2割程度含まれているため、約8割が完全に新規部位であることが判明した。同定されたイノシン化部位の多くはmRNAの長鎖3'UTR上に見出されていることから、現在miRNAによる翻訳抑制効果との関わりやpoly A付加との関連性について解析を行っている。
|