ヒトのジンクフィンガー遺伝子とホメオボックス遺伝子の全翻訳領域をカバーするオリゴDNAアレイの解析により、霊長類の前頭前野において高い発現レベルを呈する転写因子遺伝子群やその遺伝子配列が霊長類間で大きく異なる可能性がある遺伝子群を推定した。これらの遺伝子は染色体上でクラスターをなして存在し、遺伝子間の欠失、挿入、組み換えが頻繁に起きていると思われる。オリゴDNAアレイシグナルの種間差が、発現量差によるものか、配列変異によるものかを確定する目的で、脳内での発現が比較的高く、変異欠失の多そうな転写遺伝子クラスター領域(19q43.43)と少なそうな領域(16p13.3)選びだして、ヒト、チンパンジー、カニクイザル、アフリカミドリザル、マーモセットでDNA配列決定することに乗り出した。 1)アフリカミドリザルのゲノムライブラリーの作成 ; Fosmidベクターを利用して全ゲノムをカバーできるライブラリーを構築した。 2)アフリカミドリザル、マーモセットのゲノムライブラリーのスクリーニング ; 約0.5と2Mベース標的領域に対し、BACライブラリーの利用可能なマーモセットでほぼ全域領域のクローニングが終了した。 3)アフリカミドリザル、マーモセットの転写因子クラスターの配列解析 ; マーもセットの当該ゲノム領域のクローンの物理地図を作成後、支援班に配列決定を依頼した。 4)データベースを利用した当該ゲノム領域での進化速度、変異率の推定 ; ジンクフィンガー遺伝子クラスターを含有するヒト19q13.43染色体領域の遺伝子を、チンパンジー、マカクザル、牛、マウスのゲノムデータとの比較を実施した。ヒトにしかオルソログが見られないような遺伝子、霊長類にしかない遺伝子が見られ、本遺伝子領域の進化における重要性が示唆された。 5)カクタムDNAアレイを用いたプロファイリング結果との比較、再評価 ; DNAアレイ解析結果において想定された遺伝子の変異や欠失を実際の塩基配列解析結果と比較、考察した。
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