研究概要 |
国立情報学研究所・藤山秋佐夫教授および国立遺伝学研究所・小原雄治教授の両研究グループの協力のもと、立襟鞭毛虫の一種Monosiga ovataのゲノムDNAライブラリー(BAC, fosmid)を用いたホールゲノムショットガン(WGS)法によるゲノム全塩基配列決定を進めた。昨年度までに作成していたM. orataのゲノム配列データ(build2.0)には、配列特異的なシークエンスエラー(高G+C含量の影響によるもの)が含まれていることが判明しため、今年度はこのエラー対策を行い、WGS法による新たなゲノム塩基配列データを追加し、東京大学の森下真一教授(領域1 : 生命システム情報)の研究グループの協力のもと、scaffoldの再構築を行った。新たに作成したゲノム配列データ(build3.0)を用いて予備解析を行った結果、現在までに、M. ovataゲノムについて以下のことが明からかになった。(1)推定ゲノムサイズは約64Mb。(2)推定遺伝子数は約12,700、平均遺伝子長は約4,3000bp。(3)ゲノムのG+C含量は58.4%。(4)遺伝子当たりの平均イントロン数は約6.7、平均イントロン長は約330bp。(5)イントロンやスペーサーなどの非コード領域に2塩基単位の繰り返し配列が多数観察される。(6)動物型のテロメア様配列が全体で約80カ所検出された。上記データを用いて、(1)各種生物のゲノムおよび遺伝子に対する網羅的相同性検索、(2)タンパク質の各種ドメインに関する相同性検索、(3)シグナル伝達系・細胞接着・転写制御・アポトーシスに関与する遺伝子群および各種'ドメインについての網羅的系統樹推定、(4)M. ovataゲノムに多数存在するカドヘリン関連遺伝子のドメイン構造推定、(5)上記解析結果を閲覧できるデータベースおよびブラウザの試作・改良を行った。
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