ポストシークエンス時代に切望されるさまざまな配列比較技術を確立するとともに、その適用による配列情報の解読に取り組む。具体的な研究項目として、miRNAのターゲット推定について考察した。 ここでは、まず、miRNAとターゲット遺伝子の間では転写情報の一部が有意に共有されていることを示した。実験的に検証されたヒトmiRNAのターゲットデータ155例について、miRNAに関するプロモーターとターゲット遺伝子のプロモーターに共通のシス因子が存在するかどうかを調べ、各々のプロモーターについて、ヒト、マウス、ラット、イヌで保存されている6塩基以上のオリゴマーを抽出し、次に、相互作用するmiRNAとターゲット遺伝子のプロモーターの間で抽出されたオリゴマーを比較し、両者に共通するオリゴマーを同定した。すると、38%のデータについて、統計的に有意なオリゴマーの共通性が検出された。 次に、シス因子の共通性に立脚したmiRNAのターゲット遺伝子の推定法を開発し、その有効性を評価した。この推定法では、まず、与えられたヒトmiRNAについて、そのプロモーターを同定し、その多重アラインメントから候補シス因子を抽出する。ここでは、ヒト、マウス、ラット、イヌで完全に保存されている6塩基以上のオリゴマーを候補シス因子とした。次に、あるヒト遺伝子について、miRNAの場合と同じ手順で候補シス因子を抽出し、miRNAの候補シス因子との間の共通性を検出する。そして、5%の有意水準を満足するシス因子の共通性が観察されると、その遺伝子は与えられたmiRNAのターゲットであると判定する。この推定法の精度は、ランダム法の精度を統計的に有意に上回り、miRNA-mRNA結合部位の種間保存に頼らない従来法の精度とほぼ同等であった。このことは、ヒトmiRNAのターゲッティングが転写のレベルで調節される場合があることを示している。
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