生命・生物の特徴である普遍性と多様性のメカニズムを解明するために、ゲノム配列の比較と遺伝子の使われ方、あるいは相互作用・ネットワークの違いを解析する情報学的基盤システムの構築が必要である。この目的に沿って、(1)配列データの整備として、MBGDの整備を行った。特に、オーソログ分類を効果的に行うツールを開発し、遺伝子の並びがよく保存されたコア構造を抽出可能となり、微生物ゲノム構造解析へ応用し、非コア構造に比較してコア構造には必須遺伝子が多く存在する結果を得た。現在これらのツールはMBGD上で公開している。(2)生物学データの整備として、メタゲノム解析のツールの作成を行った。特に、メタゲノム情報から属分類解析を行うツールを開発し、13人の腸内細菌叢を解析した。その結果、離乳後で細菌叢が劇的に変化することを明らかにし、大人の属分布は個人間で比較的安定しているが、乳児では多様性が低いことが明らかとなった。また、16SrRNAによる群集構造解析のツールを開発し、ヒト常在菌の大腸、皮膚、肺、口腔、膣の特徴を解析した。これらのメタゲノム解析用のソフトウェアも併せて開発し、公開している。また、細菌叢を簡便に解析するチップの開発を行い、細菌叢の16Sr DNA情報を用いたマイクロアレイを開発した。(3)情報学的ツールの整備として、遺伝子発現データに基づく疾患等の責任遺伝子群の識別問題における解析ツールの開発を行った。特にカーネル識別法の開発を行い、従来の方法より識別能力の高いカーネル部分空間法を開発した。これらの識別問題を微生物の株間の形質の違いに応用し、複数の黄色ブドウ球菌の病状、部位、感染場所と関連性のある遺伝子を抽出することができ、インフォマティクスからの情報を基点とし、実験での確認を行った。
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