研究概要 |
複数種のゲノム配列から保存領域を高速に検出するシステムMurasakiを並列化するために,クラスターマシンと呼ばれる数十から数百,数千のCPUを並列に同時に動かすことのできる計算機を用いて,ヒトゲノム比較などの非常に大きな仕事を多数のCPUに分散して手分けして処理する仕組みを開発した.その結果,ヒト,チンパンジー,アカゲザル,マウス,ラット,ドッグなどを含む哺乳類9種のゲノムを丸ごと比較解析することが達成された.次に,Murasakiにより検出されたアンカーからシンテニー領域を計算するアルゴリズムを開発して,それに基づいて哺乳類ゲノムのゲノム再編成解析を行った.このアルゴリズムによって同定されたシンテニー領域に基づいて,ヒト,チンパンジー,アカゲザル,イヌ,マウス,ラット,オポッサムの7種に対して再編成に基づく系統樹を計算した.その結果,再編成に基づく進化系統樹は,霊長目と食肉目のクレイドに対して,げっ歯目は遠縁であることを示した.機能性RNAの解析のための新しいアルゴリズムの開発では,RNA2次構造の与えられたエネルギーモデルと,予測に適した評価尺度に対して,理論的に予測精度が最大となる予測手法を開発した.構造既知のRNAによる計算機実験では,1本のRNA配列からの2次構造予測,RNA配列群からの2次構造予測のどちらにおいても,既存のどの手法よりも精度が高いことが実証された.最後に,Murasakiが出力するアンカーを用いて,多種間に保存されるシンテニー領域を同定するシステムOSfinderと,遺伝子間のオルソログとパラログの関係を求めるシステムOASYSの開発を行なった.101種の原核生物ゲノム比較及び15種の菌類界ゲノム比較にOASYSを適用することにより,ゲノム進化の過程において,遺伝子の並びの進化とタンパク質配列の進化の間に相関があることを明らかにした.
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