研究概要 |
チンパンジーY染色体の比較ゲノム解析に参加し,マウスとラットのゲノムの大規模比較を行って,遺伝子変換のパターンを推定した。ヒト上科の4種(ヒト,チンパンジー,ゴリラ,オランウータン)について,9個のタンパク質コード領域直上の塩基配列を決定し,それらの進化学的解析を行った。 テナガザル3種のABO式血液型遺伝子の塩基配列を複数個体で決定し,それらのあいだの進化的関係を系統ネットワーク法を用いて推定したところ,約100万年前と約500万年前に遺伝子内組換えが生じていたことがわかった。このことから,種を超えた多型が維持されてきた可能性が高いことが示された。 チンパンジーのRh式血液型遺伝子の全体像を知るために,BACクローン3個の塩基配列を決定し,ヒトゲノムの配列と比較した。その結果,遺伝子重複が生じた後,ひんぱんに遺伝子変換が生じてきたことがわかった。 ヒトのY染色体上の雄性特異的遺伝子群について、常染色体上、X染色体上、他の哺乳類での相同遺伝子などの塩基配列とともに、これらの遺伝子群の起源と進化の過程を明らかにした。 ヒトの脂質蓄積症(LDS)関連の遺伝子近傍200kbのSNPを利用したハプロタイプ解析から、この遺伝子について正の自然選択が働いている可能性を示す結果を得ている。 Vertebrate Genome Annotation (VEGA)データベースにはヒトゲノム中の710の非プロセスド偽遺伝子が同定、登録されている。これらの偽遺伝子のうちアノテーションがついている393個の偽遺伝子についてホモローガスな遺伝子の機能をNCBIのデータベースから調べている。今後はこれらの遺伝子について、偽遺伝子化の時期や偽遺伝子化の原因等について詳細に解析していく。その際の方法論も検討したい。
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