研究概要 |
斎藤班 : 今年度は以下の4種類の研究を遂行した。 1) ABO式血液型遺伝子の進化について, 系統ネットワーク作成を含む詳細な解析を行い、テナガザル3種において過去に生じた5回の組み換えを復元した。この遺伝子になんらかの正の自然淘汰が働いていることを示している。 2) バクテリアゲノム配列のオリゴヌクレオチド頻度情報からどこまで系統関係を復元できるのかを大規模に調べて、相同性のないゲノム部分配列からもある程度まで系統樹を復元できることを明らかにした。 3) 新しいアルゴリズムに基づいた大規模塩基配列の多重整列システムMISHIMAを開発した。MISHIMAは, 十数塩基までの短い配列の統計を全配列から取得し, それらをもとにして相同な領域を推定し, 長い塩基配列を切断する。このような手法により, ヒトミトコンドリア全ゲノム数百本あるいはバクテリアゲノム4本の多重整列を数時間で行うことが可能になった。現在論文を投稿中である。 4) ゲノムを大規模同時比較することにより, 全哺乳類で進化的に保存された領域を抽出した。これらの領域のDNA断片をマウス受精卵にインジェクトし、トランスジェニックマウスを作成、機能解析した。着目した遺伝子はパラホックス遺伝子群である。その結果, 進化的に高く保存されている領域のすべてが近傍のタンパク質コード遺伝子の発現を制御しているわけではないことがわかった。現在論文を投稿準備中である 颯田班 : 今年度は特にゲノムの構造が遺伝子進化へ及ぼす影響を、特に霊長類ゲノムに焦点を当てて研究した。具体的には, SEC22B遺伝子領域ではヒトとチンパンジーに多型的に偽遺伝子が存在し、それがCNVによる可能性を示した。また、ヒトゲノムの特に回文構造や逆位、縦列重複などの高次構造と遺伝子進化の関係を解析している。現在論文を投稿準備中である。
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