研究概要 |
1、フグOtx2遺伝子座約70kb(-30〜+38kb)に渡って14種類のトランスジェニックマウスを作製し、レポーター遺伝子の発現を解析したところ、3'側約+13kb周辺の1.1kbゲノム断片がマウス胚臓側内胚葉の発現を支配する活性を担っていた。マウス、ニワトリ、ヒトのゲノム配列との比較解析及び詳細な塩基置換変異による発現解析を行うことで、フォークヘッド型転写因子の結合配列が活性に必須であった。次に、このフグ1.1kbゲノム断片がゼブラフィシュ胚においてどのような機能を担っているか検討するため、トランスジェニックゼブラフィシュを作製した。F0及びF1胚においてレポーター遺伝子の発現を解析したところ、sphere期から将来のshield部分で発現が認められ、原腸形成後では前方の中内胚葉で、最終的にはpolster及び心臓などで発現が認められた。更に内在性のOtx1,2,3遺伝子の発現と比較したところ、レポーター遺伝子の発現は内在性Otx遺伝子の発現ドメインに含まれていた。2、マウス前後軸形成過程で、カノニカルWntリガンドは将来の後側に限局して発現し、その拮抗因子であるDkk1は前側で発現することから、哺乳動物胚においても他の脊椎動物同様に、カノニカルWntシグナルの非対称な分布が軸決定に必須であることが示唆された。実際、標的分子である-cateninの発現を解析したところ、臓側内胚葉層の前側で強く後ろ側で弱く核内に局在していることを見いだした。更に、カノニカルWntリガンドとその拮抗因子が臓側内胚葉細胞の前側への移動に反発性及び誘因性のガイダンス分子として働くことを明らかにした。つまり、他の脊椎動物において見られたカノニカルWntシグナルの非対称な分布は哺乳動物への進化の過程でも保存され、体軸決定に利用されていることを明らかにした。
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