研究概要 |
マメ科植物ミヤコグサのHAR1タンパク質は、根粒菌の分泌するNod factorによる根粒着生の負の制御系に必須な受容体型キナーゼである。今年度は、ミヤコグサのゲノム情報を活用することによって、そのリガンド候補として40の遺伝子を検出し、その中からHAR1依存的に根粒形成を抑制する2つのペプチドコード遺伝子LjCLE1,LjCLE2を同定することに成功した。LjCLE1,LjCLE2を過剰発現すると強い根粒抑制効果がみられ、この効果は形質転換した根のみならず、それ以外の根にも伝達された。また、LjCLE1,LjCLE2の発現誘導には、Nod factorが必須であることを明らかにした。 一方、これまで進めてきた酵母2-ハイブリッド法による根粒菌タンパク質相互作用の大規模解析の結果、1804種類のタンパク質(根粒菌全タンパク質の24%)を含む3121の相互作用候補を同定することができた。そして、遺伝子発現やオペロン構造、タンパク質の機能ドメインなどの情報を指標として、本研究で得られた相互作用情報を精査することにより、新規な共生窒素固定関連遺伝子の候補を多数同定した。 上記タンパク質相互作用解析によって同定した新規共生関連遺伝子候補の機能解析を効率化する目的で、トランスポゾンを利用したミヤコグサ根粒菌の大規模遺伝子破壊系の構築を行った。これまでに約3万クローンの変異株を収集しており、そのうち9千クローンの挿入位置を解析した結果、3156種類の遺伝子への挿入変異が確認された。この挿入変異株を用いた遺伝子機能解析を進めるとともに、この遺伝子破壊系をリソースとして活用するためのデータベースの構築も行った。
|