研究概要 |
(1) araR遺伝子の制御下遺伝子として、16種の糖質分解酵素ならびにアラビノース代謝に関与する4種の酵素遺伝子を同定した。ソルビトール代謝を制御する転写因子、多様な多糖分解酵素遺伝子の発現や分化に関与する広域転写因子も見出した。マルトース資化クラスターに存在する転写因子MalRに制御されるマルトースパーミアーゼMalPによるマルトースの細胞内取込みが、デンプン分解酵素生産にとって重要であることが示された。さらにmalRまたはmalP破壊株では、通常は発現がほとんど見られないホモログクラスター遺伝子の発現量が顕著に増加していた。 (2) 15種全てのHKとGFPとの融合遺伝子の発現及び破壊株の解析から、HK8-2が酸素濃度低下に伴う有性生殖の誘導に関与することを明らかにし、HysA(Hypoxia sensor A)と命名した。精製HysAは還元剤の存在下で自己リン酸化するため嫌気センサーであると考えられた。生育に必須なypdA遺伝子の条件的破壊株にHogA経路のMAPKKであるPbsB欠損を導入したところ、ypdA発現低下時にHogAは活性化されなかったが、依然として生育阻害を示した。この結果から、SskA(→HogA)ではなく、SrrAがYpdA欠損時の致死性に関与することが示唆された。また、ypdA遺伝子の発現低下時にgfdBやcatA遺伝子が発現誘導されていたことから、ypdA遺伝子の発現が低いとHogA経路が活性化されることが判明した。 (3) 輸送小胞の輸送に必要とされる10種類のRab GTPaseの細胞内局在を調べた。Golgi体と思われる菌糸先端領域に多く見られるドット状構造体にAoRab1, AoRab2, AoRab6が、菌糸先端の分泌に重要なSpitzenkorperにAoRab4, AoRab11, AoSec4が、またearly endosomeにはAoRab53が局在していることが示唆された。構造異常型1, 2-α-マンノシダーゼの高発現ではbip4やpdtAなどのUPRに関連した遺伝子群の発現が上昇しており、HacAのスプライシシグも引き起こされていた。pepA, tppA, alpAに加えてnptBの破壊によりリゾチーム生産量の向上が認められ、Cryptococeusクチナーゼ生産にPrtRとPepEの二重破壊株を用いることにより分解が抑制されて生産量が著しく向上した。
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