研究概要 |
カンジダは人体内に常在する極めて珍しい真菌である。健常者にとっては大きな問題とはならないが,エイズや免疫抑制剤の投与によって免疫力の低下した患者に対しては重篤な日和見深在性感染症を起こすため問題となっている。我々は、カンジダの病原性解明と優れた抗真菌薬の開発を目指している。 真菌類およびヒトゲノムのデータベースを用いて、真菌類に高く保存され,人には類似性の低い遺伝子を抽出した。S.cerevisiaeでは富栄養下での生育必須遺伝子が同定されており、我々が抽出した遺伝子の中からこれらの遺伝子に対する187のオーソログ遺伝子を抽出した。これらを抗真菌薬標的候補とし、TetPを各遺伝子のプロモーター領域に導入した株(Tet株)を体系的に構築しており、これまでに183株を完成させた。今後、これらの株を用いてin vivoでの生育について解析を行い、抗真菌薬の標的として最適な遺伝子を選択する。また、今後の遺伝子組換え操作をより効率よく進めるために新しい実験系を構築している。Saccharomyces cerevisiaeにおいてYKU80が、Non-homologous End Joiningを誘導することが知られている。我々はC.glabrataにおけるYKU80に対するオーソログ遺伝子について欠損株を構築し、ターゲティングの効率が上昇することを既に確認した。しかし、YKU80のDNA修復において重要な遺伝子であるため欠損株では、ゲノムの不安定化などの支障を来すことが予測されるため、Tetpの導入後に速やかにYKU80を復帰させることを試みている。
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