研究課題
本研究では脳動脈瘤(くも膜下出血)の発症に関連する遺伝子同定を目指す。本年度はゲノム全域SNP解析における、品質管理の問題を中心に解析した。11 lumina HumanHap300 BeadChipを用いた計500例のジェノタイピングが完了した。BeadChipのバージョン更新に伴い、300例はHumanHap300vl、残りの200例はHumanHap300-Duo(v2-2)を用いた(2つのチップに共通のSNPは312,712個)。全体のコール率は99.5%を超えるものであった。タイピングデータに関して、サンプル除外基準を次のように設定し、サンプルのクオリティーコントロール(QC)を行った(括弧内は除外対象となったサンプル数):(i)コール率97%未満(2例)、(ii)サンプルの重複(2例)、(iii)未報告の血縁者対(2例)、(iv)異なる祖先集団由来(12例)。項目(iv)の結果は、日本人サンプルにおいても階層化が生じうることを考慮する必要性を示唆している。実際、祖先集団の明らかなHapMap CHBや韓国人サンプルのなすクラスターとは異なるルートでの日本列島への流入の可能性を示唆している。QC基準を満たしたサンプルは症例288例、対照194例であった。また、SNPのQCについては、実験的なタイピングエラーの他にコピー数変異やプローブ上に局在するSNPが影饗を及ぼすため、その効果を調査した。その結果、コール率の低下、Hardy-Weinberg平衡(HWE)からホモ接合過剰な配位への有意なシフトが生じる傾向を見出した。その上で除外基準をコール率、対照サンプルにおけるHWEからのずれの度合(正確検定のp-値)およびその向き(ホモ接合超過度)という3つの指標を用いて設定し、計512個のSNPを関連解析から除外した。関連検出の検出力を考慮し、サンプル全体でのマイナーアリル頻度の下限を5%に設定した。最終的に250,570個の常染色体上のSNPを関連解析に供した。X染色体上のSNPに関しては独立な解析が必要であり、X染色体の不活化をモデルに適切に取り込む必要があるが、これに対する共通認識が得られていない状況である。そのため、常染色体上のSNPに限定した。1次スクリーニングの解析プロセスにおいて、C-A検定で最小のp-値を示した21個のSNPに対してTaqManアッセイを用い、脳動脈瘤患者と対照各196例に対して追加タイピングを行った。これは、Parkinson病のGWASを一例として、一般の多因子性疾患では数100サンプル規模の1次スクリーニングでは「トップ10」戦略がうまく機能しない可能性が高いことが示唆されているが、脳動脈瘤の遺伝様式が不明確であるため検証実験を試みたものである。この結果は、示唆されている通りのものであった。対照サンプルをRIKSN JSNP550のサンプル(934例)と拡大して得られた有意性の上位21個のSNPに対しても同様の結果が得られた。したがって、脳動脈瘤感受性変異同定のためには、包括的な2次スクリーニングが必要不可欠であることが明確になった。
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