研究概要 |
本研究計画の診療データベースの基盤となる臨床情報データベースを構築し、東大病院内科部門に入院した約3,000名の臨床所見についてデータベース化を行った。このデータベースを用いた臨床情報とゲノム情報の解析を行い、データベースシステムの問題点を検討した。特に、ゲノム解析に対応できる正確な臨床情報を蓄積・解析するためのシステム作りを進め、疾患名・薬剤名のマスターデータベースの作成、疾患名の登録基準の厳密な定義、標準入力項目を確実に集積するための入力インターフェイスの作成などを行った。このように疾患のシステム的理解を目的としたデータマイニングと、臨床的観点からの新規診断法の評価、日常診療へのデータベース情報の導入に耐える堅牢かつ柔軟なシステム構築を行った。実際に循環器内科および糖代謝内科の入院・外来診療からの運用を通して、システムの評価と改善をおこなっている。 500名の心筋梗塞患者および450名の対照群のゲノムDNAをもちいて約40種類の心血管作働物質遺伝子多型を候補として解析をおこなった。KLF5遺伝子プロモーター領域のSNPおよびアドレナリンβ2受容体遺伝子コーディング領域のSNPに関しては心筋梗塞発症との間に有意な相関を認めた。しかしながら他のSNPに関しては約200名の予備的検討により相関が疑われたものの、500名までスケールアップして検証すると再現性が得られなかった。当初予想していたよりも心筋梗塞のマーカーとなる遺伝子多型は少ないことがわかった。遺伝子変異解析の方向性を見直す必要がある。それをうけて平成20年度以降遺伝子解析方法に変更を加える。
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