研究概要 |
現在の豊富なゲノム情報と資源のもとで、ヒト疾患のゲノム一次構造のhigh-throughputな検出ツールとして重要となる高精度・高感度のゲノムアレイの開発研究ならびに、これを用いたヒト疾患のゲノム一次構造解析などの解析を推進し、以下の結果を得た。 (1)各種ゲノムアレイ作製: ゲノムワイドなスクリーニング用アレイ(MCG Whole Genome Array-4500)とX染色体全体をカバーする高密度アレイ(MCGX-tiling Array)に関して、継続してスポット用DNA作製プロトコールの改良とクローンのFISHによる染色体上への正確なマッピングを行った。遺伝疾患診断用アレイ(MCG Genome Disorder Array)については、現行のVer.2に続いてセントロメア側のマーカーや疾患関連領域の追加などVer.3作製のためのデザインを行った。既知のcopy number variation(CNV)の効率の良いスクリーニングを目的とした新規アレイ(MCG Genome Variation Array)作製のために、約700の領域を対象にBACクローンを選択し単離、FISH施行の上、不死化・スポット用DNA加工を行った。 (2)ゲノムアレイによる解析システムの整備: アレイCGH法のプロトコールの改良によるランニングコストの抑制とラベリング効率の改善ならびに、多様なアレイに対応した解析システムの構築とUpdateを行なった。 (3)ゲノムアレイを用いた応用解析法の開発: ゲノムアレイを用いたDNAメチル化検出法の有用性を実証するために、本方法を用いて新規メチル化遺伝子の同定を進めた。 (4)ゲノムアレイを用いたヒト疾患におけるゲノムの一次構造異常の解析: 本態不明の様々な疾患の病因・病態に関与する遺伝子の同定のため、特に先天奇形と精神発達遅滞を伴う本態不明の遺伝疾患を中心に検体の重点的収集を図り、バンキングを行うと共に、MCG Genome Disorder ArrayとMCG Whole Genome Array-4500を併用してコピー数異常の検出を行なっている。既に230検体を越える検体(DNAおよびEBVで不死化したリンパ球)を収集し、アレイ解析の結果はすみやかに臨床の場にフィードバックすることで療育などに役立てた。また、詳細なコピー数異常解析から複数の新規疾患関連領域が検出されたが、個々の異常領域に関して更に遺伝子同定を行うべく詳細な解析を行った(Hayashi et al., in press ; Hayashi et al., in press ; Honda et al., in press)。一方、同時に収集されるCNVのデータからは、公的データベースに未収載のものが複数得られていることから、日本人に特有なCNVあるいはまれなCNVがまだ多く存在している可能性があることが明らかになった。
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