研究概要 |
ウェルシュ菌virX遺伝子のグローバル調節系の解析 これまでに得られている多数のマイクロアレイ実験の情報解析から、転写調節RMAであるvirXに調節されると予測されたレギュロンのノザン解析の結果、シアリダーゼ、3種のヒアルロニダーゼ、プラスミド上の遺伝子群、さらに芽胞(胞子)形成に関与する遺伝子群(spoOA, sigF, sigE, sigG, sporulation proteinなど)の発現をvirXが転写レベルで強く抑制していることが明らかになった。このことは、virXがグローバルに多様な遺伝子の発現を負に調節していることを示し、特にこれまで不明であったウェルシュ菌の胞子形成制御にも関与していることが示唆された。さらにウェルシュ菌の胞子形成は本菌の腸管毒素産生を誘導することが知られており、virXが胞子形成を通じて食中毒の原因である腸管毒素の産生調節にも関与している可能性が考えられた。現在、食中毒株であるウェルシュ菌SM101のvirX変異株を作製中であり、virXが芽胞形成や腸管毒素産生に及ぼす影響をみる予定である。 A 群レンサ球菌の全ゲノムタイリングアレイの作製と遺伝子発現プロファイリング A 群レンサ球菌SSI-1株の全ゲノム配列を元に、全ゲノムタイリングアレイの設計・作製を行いその遺伝子発現を定量的に解析するシステムを開発した.アレイの設計に加えて、前年度の課題であった高純度のRNAの抽出プロトコールを見直すと共に、RNAのラベル方法にも改良を加え、RNAを直接ラベルすることによりプラス鎖、マイナス鎖それぞれに発現している遺伝子の発現を高感度に検出する方法を開発した.この方法を用いてSSI-1株の各増殖期における遺伝子発現を調べ、そのうちの77遺伝子を抽出してreal-time RT-PCRによる遺伝子発現量を検定したところ、real-time RT-PCRで得られた結果とタイリングアレイで得られた結果が正の相関を示した.これにより、今まで不明であったA群レンサ球菌の遺伝子発現の各増殖フェーズにおける遺伝子発現の絶対的な定量値による比較やオペロンの同定、non-coding RNAの発現などを明らかにすることが可能となり、これらの結果と病原性との関わりについてさらに解析を加える予定である.
|