研究概要 |
ウェルシュ菌においてはこれまでにマイクロアレイを用いて、VirR/VirSシステムや転写調節RNAである. VR-RNAシステムなどのウェルシュ菌の病原性調節ネットワークを明らかにし、さらに未知のレギュロンの同定をネットワーク情報解析により明らかにしてきた。virR/VirS系については、本システムが直接制御する5つの遺伝子について解析を行い、毒素遺伝子pfoA、proteaseであるalpha-clostripain、VR-RNAの他に、機能未知の2遺伝子が転写レベルでVirR/VirSにより正の調節を受け、2つの遺伝子は転写調節RNAとして本システムによる発現調節の微調整に関与していることを明らかにした。また、virX遺伝子については、芽胞非形成性であるstrain 13においてvirX遺伝子を破壊し芽胞形成を促進する培地で培養すると、芽胞を形成することが明らかになった。このことは、virX遺伝子が通常は芽胞形成を抑制していることを示し、ウェルシュ菌の芽胞形成制御に関与していることを示すものと考えられた。 A群レンサ球菌については、A群レンサ球菌を種々の細胞に感染させ, マイクロアレイにより, オートファジーによる分解が起こる感染後4時間まで1時間おきに細胞内のA群レンサ球菌の発現解析を行った。HeLa細胞に感染したA群レンサ球菌において,感染後, 全ての時間で共通して高い発現を示した遺伝子数は128個, 咽頭上皮由来のKyse510細胞に感染させた場合では72個であった。両方の細胞で共通かつ感染前の菌で発現が低かったのは, 19個の遺伝子で, 転写制御因子やRNA結合タンパク質がみられたが, 60%程度が未知の遺伝子であった。また, オートファジー欠損細胞内でのA群レンサ球菌の遺伝子発現パターンと比較したところ, リボソームタンパク質S13のみが野生型の細胞に感染した場合に高い発現を示しており, A群レンサ球菌のオートファジー存在下での生存に関わっている可能性が考えられた。
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