研究概要 |
ゲノム科学研究の進展により,種々のヒトゲノム解析技術が開発され,これらの技術を医学研究に応用することにより,新しい診断法,治療法,予防法が生まれ,人類,社会にとって多大な貢献がなされるものと期待されている。一方,ヒトに関するゲノム情報の解明は集団のレベルにおいては,人種,民族,血族などの差を明らかにすることにもつながり,また,個人のレベルでは病気と健康,異常と正常,さらには行動様式の差を明らかにする可能性があるので,ヒトゲノム情報を扱う際には,社会への影響を十分,考慮しておく必要がある。そこで,本研究では次の3課題につき,研究を行なっている。課題1)すでに行われている遺伝子診療の事例を基にゲノム情報を医療に役立てる際に生じうる課題を整理し,我国の文化的背景に適した遺伝子診療のあり方を提案する。課題2)ゲノム科学研究の社会への影響を明らかにするために,ゲノム科学研究に関連する課題を整理し,それを基に専門の異なる多くの識者間で共通認識をもてる部分を蓄積し,今後の対応策を提案する。課題3)研究項目1および2において多くの成果が予想される主に多因子疾患についての疾患感受性(易罹患性)に関係する遺伝子多型情報について,研究項目1および2と連携を取りながら,臨床的有用性についての総合的検討を行う。 特に本年度,ゲノム医科学に関する,ユネスコ,WHO,HUGO,CIOMS,CE,EUなどの国際機関による指針,条約,宣言,および諸外国の法令,指針,報告書,声明などの資料について,網羅的に収集・解説するデータベースを構築した。ゲノム医科学の社会的問題を検討するためには,このデータベースは不可欠であり,大きな成果をあげることができた。
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