研究概要 |
緑内障と加齢黄斑変性(AMD)の発症原因・関連遺伝子について以下の結果を得た。 1. 緑内障の原因遺伝子探索:酵母2ハイブリッド法により、緑内障の既知原因遺伝子オプチニューリンの相互作用タンパクをスクリーニングした。その中から、緑内障発症の要因となる「細胞へのストレス負荷」に関連し得る遺伝子を柚出・分類して、翻訳領域全長cDNAを単離した後、培養細胞での発現と相互作用を確認した(下記中、発、相は、それぞれ発現が、さらに相互作用も確認されたものを示す)。 (1) 細胞死の誘導関連[発:VDAC2;相:SLC4A2, ATP6V0E2] (2) ゴルジ体-核移行関連[発:DYNLL1, CETN2, TAGLN;相:RANBP10] (3) 核移行後の機能関連[UBC, WSB2, FALZ] (4) その他シグナル分子、細胞骨格等関連[PLOD, WNT2B, RIPK;発:CLU, FTL, TRAPP, EEF1A;相:Rab8] 2. AMDの関連遺伝子探索:ラット網膜光障害実験モデルでは、白色光照射で起こる網膜光障害の感受性の程度がラットの系統により異なるため、感受性を支配する遺伝子(群)の同定可能と考えられその遺伝子はAMD発症に寄与する可能性がある。昨年度までに、光障害感受性と光障害耐性(以下、感受性、耐性)の純系を交配して解析した結果、感受性が耐性に対して常染色体優性のメンデル遺伝形質を示すことを得ていた。そこで、F-1に対して耐性の純系を戻し交配し、感受性の戻し交配個体(BC-1)を選別して、その個体にさらに同じ戻し交配を繰り返した。BC-1~BC-4の全個体を表現型解析したところ、どの世代でも個体数比が感受性:耐性≒1:3となり、2遺伝子の同時関与が想定された。純系親を見分ける多型座位を利用して、BC-3、BC-4個体を解析したところ、2座位(5番および19番染色体)について、感受性親のゲノムが共通して残存していることが判明し、表現型解析により推定される関連遺伝子数と一致した。現在、遺伝子の同定に向けて戻し交配を継続している。
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