研究概要 |
<目的> ほとんどの病原微生物の全ゲノム配列が解読された結果、その中には、宿主の生体分子と相同性のある遺伝子が数多く存在することが判明してきた。特に、持続感染を示すウィルスのゲノムには、このような疑似分子が数多く認められる。その代表的なものが、ウィルス等の持つMHC様の分子であり、NK細胞等の発現するペア型レセプターによって認識される病原体分子を明らかにすることは、病原体の病原性機構を明らかにする上で非常に重要である。そこで、本研究では、病原体、特にウィルスやマラリア等の寄生虫が持つ宿主疑似分子を、該当するゲノム情報を用いて様々な方面から検索し、ペア型レセプターによるそれら宿主疑似分子の認識機構、病原性機構の解明を目的とした。 <成果> 抑制化CD200レセプターは広範囲に発現する自己抗原CD200をリガンドとして認識する。興味深いことに多くのウィルスゲノムにはCD200様分子がコードされており、抑制化CD200レセプターを利用した免疫回避機構を備えていると考えられている。しかし、これらのウィルスCD200様分子による免疫回避機構を分子レベルで解明した報告は皆無であった。そこで、我々はこれらのウィルスCD200様分子のクローニングを行い、Herpesウィルス6,7,8型のゲノムがコードするCD200様分子が宿主の抑制化CD200レセプターによって認識されることを明らかにした。さらに、ヒト末梢血単核球画分に含まれる好塩基球が抑制化CD200レセプターを高発現していること、宿主の自己抗原であるCD200に加え、HerpesウィルスCD200様分子は抑制化CD200レセプターを介して好塩基球の活性化を著しく抑制することを明らかにした。さらに我々は2005年度の本課題研究において、前述の12量体Ig複合分子およびレポーター細胞を用いることで、ウィルス感染細胞だけではなく、黄色ブドウ球菌を直接認識する抑制型のペア型レセプターおよびマラリア原虫が感染した赤血球を特異的に認識する抑制型のペア型レセプターの同定に成功した。
|