研究概要 |
黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥脱毒素ETAの産生制御機構を明らかにするために、黄色ブドウ球菌の病原性因子をグローバルに制御することが報告されているAgr、SaeRS、ArlRS、DNA結合タンパク質であるSarA及びSarS、さらにRNApolymeraseのシグマ因子であるSigBのETA産生における関与について遺伝子破壊株を作製しET解析を行った。その結果、ETA産生はAgrCA、SaeRS、ArlRSにより正に制御、SarA, SarS、SigBにより負に制御されていることを明らかにした。 黄色ブドウ球菌二成分制御系-既に作成した黄色ブドウ球菌二成分制御系の網羅的欠失変異株を用いて、緑膿菌存在下で増殖抑制がかかる株を探索した結果、TCS2, ArlRS, AgrCA, TCS5で増殖抑制が認められた。また同様の変異株を用いて、黄色ブドウ球菌培養上清中クォラムセンシング(QS)阻害物質のC.violaceum増殖抑制活性を測定し、TCS2, arlRSでQS阻害物質の産生促進、agr, TCS5でQS阻害物質の産生抑制を認めた。黄色ブドウ球菌の系統-系統解析の結果、我が国の臨床分離株の代表としてPFGE解析により見いだされた41のクラスターからクラスターごとに複数株を選択し、緑膿菌PAO1株存在下での増殖抑制の程度を調べた結果、院内感染型の株に優位に多く、緑膿菌に対して高感受性を示す株があり、市中感染型の株は逆に低感受性を示す株が多い事が明らかとなった。緑膿菌の産生する黄色ブドウ球菌増殖抑制因子の探索-緑膿菌PAO1株のTnライブラリーから黄色ブドウ球菌に対する増殖抑制を喪失あるいは減弱した株をスクリーニングし、変異株のTn挿入位置の同定を行った。現在までに(1)PQSの合成系、(2)QSの合成系、(3)LasA、(4)hypothetical genesが検出されている。
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