Porphyromonas gingivalis(P.gingivalis)はもっとも有力な歯周疾患の原因菌と考えられている。また近年では全身の慢性炎症性疾患との関連性も強く疑われている。宿主内で多く発現している遺伝子が病原性に関わっている可能性が高い。BALB/cマウス背部皮下に埋入したコイル内腔にP.gingivalis W83株を接種し、6時間後に菌体を回収した。回収された菌体で発現量の上昇した蛋白質の中で3種、immunoreactive 61 kDa antigen PG91、DNA-binding response regulator RprY、TPR domain proteinに着目し、W83株を用いてそれぞれの遺伝子変異株を作製した。RprYは2成分制御系の調節蛋白質分子であり、マウスを用いて各変異株の病原性を検討したところ、PG91欠損株の病原性は親株(野生株)との間に差が見いだせなかったが、RprY、TPR domain proteinそれぞれの欠損株では病原性が顕著に減弱していた。RprYは2成分制御系の調節蛋白質分子であり、またTPR domainは真核細胞においてシャペロン分子の足場のような役割をしていることから、両者が複数の病原性因子の調節に関わっていることが示唆される。 ゲノム情報からのアプローチとしてW83株とATCC33277株で異なっている莢膜合成に関する酵素の遺伝子欠損株を作製した。また33277株をベースとしてトランスポゾンTn4351の挿入変異株ライブラリーを作製した。これらの株について今後病原性の検討をおこなう必要がある。
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