急性骨髄性白血病を中心とした造血器悪性腫瘍の病態解明・分子予後マーカーの同定を目指して、患者骨髄よりCD133陽性造血幹細胞分画のみを純化保存する大規模バンク事業を行った。これらのサンプルにおいてタンパクコード遺伝子以外にも病態に関与する機能分子を同定する目的で、マイクロRNAの白血病検体におけるプロファイリングを目指した。マイクロRNAは低分子量のnon-codingRNAであり、標的mRNAの翻訳を制御する機能分子と考えられる。旧来マイクロRNAのクローニングには数十μグラム以上のRNAが必要であったが、我々は十ng程度のRNAから同定を可能にする高感度クローニング法microRNA Amplification Profiling(mRAP)を開発し、さらにそれを次世代シークエンサーで直接解析するmRAP-IGA法を成功させた。それを用いてまずマウスにおける全miRNA同定プロジェクトを行い、さらに白血病芽球におけるマイクロRNAプロファイリングも行った。一方白血病芽球内のがん遺伝子を直接同定する目的で、約900万塩基対を直接配列決定可能な大型シークエンスアレイを開発し、それを用いて白血病芽球における約5400遺伝子のコーディングエクソンの配列決定を行った。その結果約1万種類の遺伝子の配列変異を同定し、さらにそれを同じ患者の健常分画と比較することで後天的変異(体細胞変異)のみに絞り込むことに成功した。こうして得られた配列異常の中には直接がん化能を有する遺伝子異常が存在していた。
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