研究課題/領域番号 |
17019065
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
五條堀 孝 国立遺伝学研究所, 生命情報・DDBJ研究センター, 教授 (50162136)
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研究分担者 |
菅原 秀明 国立遺伝学研究所, 生命情報・DDBJ研究センター, 教授 (80231372)
池尾 一穂 国立遺伝学研究所, 生命情報・DDBJ研究センター, 助教授 (20249949)
鈴木 善幸 国立遺伝学研究所, 生命情報・DDBJ研究センター, 助手 (70353430)
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キーワード | 疾患情報モデル / データベース / ゲノム / 表現型 / アノテーション |
研究概要 |
情報リソースの研究とその整備においては、疾患情報モデル作成のための情報リソース整備に向けて、国内外において構築、公開されている生命科学データベース、特に疾患に関係するデータベースについて、実際に入手、もしくはインターネットを介してアクセスし、それらのデータの中身および利便性の調査・評価を引き続き進めている。 次に、疾患モデル情報・構築システムの開発については、引き続きプロトタイプの開発に向けてゲノム情報を含む遺伝子配列データから、書誌情報に現れる種々の医療関連情報などを含めて一元的に管理、統括するためのシステム設計を進めている。とくに、疾患モデル作成のために特定の疾患に関連する情報を、遺伝子レベルから表現型レベルまで一括して検索し、個々の情報を生命科学的意味付けにもとづいて再度関連付をするための仕組みの設計を引き続き進めている。このような仕組みにより得られた情報は、疾患モデル作成の際の基礎情報として用いられる予定である。 また、アノテーション・検索システムについては、種々・多様な情報を一括して串刺し検索することを可能にするような方法論と、それらの情報を効率良くアノテーションするとともに遺伝子、細胞、個体にいたる、広く、多様、かつ複雑な情報を利用者に分かりやすく伝えるための、画像を中心としたデータの表現方法と表示のための技術検討を更に押し進めた。また、いくつかのアイデアをプロトタイプとして作成し検討に入った。 とりわけ、脳・神経系の疾患情報データベース構築として、脳の3次元画像に各種のデータを貼り付けていく作業を、ユーザーに使いやすいシステムを構築していくことを第一の課題として進めている。 次に、他の大組織カテゴリーに特異的に発現する遺伝子と合わせて、ヒトゲノム中にそのゲノム上の位置をマッピングした。その結果、ヒトゲノム中に8つの脳・神経系に特異的に発現する遺伝子クラスターを発見した。これらの遺伝子クラスターの遺伝子機能とのかかわり合いを現在調べているが、その他の遺伝子ゲノム上の位置関係から推測して、明らかにゲノム重複によってこれらの遺伝子クラスターが出現したものとは思われない。次に、これらのヒトの脳・神経系に特異的に発現している遺伝子について、13の完全ゲノムが決定されている生物種において、オーソログがあるかどうかを、相同性検索を用いて検索したところ、ヒトにおいて脳・神経系に特異的に発現していることが知られている遺伝子の実に14%はヒトと酵母の分岐以前にすでに存在していたことが今回新たに明らかになった。この発見は、脳・神経系を持たないと考えられるヒトと酵母の共通祖先生物種において、現在ヒトにおいて脳・神経系に特異的に発現していることが知られている遺伝子がすでに存在していたことを示しており、これら14%の遺伝子は、進化の過程において、脳・神経系以外の機能から脳・神経系の機能へと、生物学的機能を劇的に変化させてきたことを意味している。もし、この発見が本当だとすると、残りの86%の遺伝子は進化の過程で新たに出現してきたと考えられる。 これらの知見は、ヒトの脳・神経系に特異的に発現する遺伝子群の同定やそのヒトゲノムの位置、さらには他生物との遺伝子関係を比較することによって推察すべき疾患モデルの特に機能的推測の基礎を与えるものであり、同時にデータベース推察のプロタイプ作成に大いに役立つものと思われる。
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