研究課題
自己免疫性甲状腺疾患(AITD)の感受性遺伝子として同定したZFATは、18個のZn-fingerモチーフを有する転写制御因子様タンパクをコードする。そのスプライシングバリアントであるTR-ZFAT (truncated form of ZFAT)は11個のZn-fingerモチーフを持つ。ZFAT特異的抗体を作製し、脾臓及び胸腺において180kDaのZFAT蛋白質の発現を確認した。B細胞、T細胞で発現し、非リンパ球では発現しないことがわかった。リンパ球前駆細胞株を用い、強制発現やノックダウンによる遺伝子発現変化を検討した結果、サイトカインや抗原受容体構成分子など免疫応答に重要な鍵を握る一群の遺伝子発現がZFATにより抑制されることを明らかにした。ZFATおよびTR-ZFATを過剰発現するトランスジェニックマウスを樹立したが、免疫系細胞の分化および活性化に大きな変化はみられなかった。ES細胞での相同組換えを行いキメラマウスの作成を経てZFAT遺伝子欠損ヘテロマウスを得た。これらの交配によりホモ欠損マウス作出を試みた結果、ZFAT欠損個体は胎生致死であり、初期個体発生において必須の役割を果たすことがわかった。トランスジェニックマウスと交配したところ、full-length ZFATではホモ欠損による胎生致死を回避できたがTR-ZFATでは回避されなかった。ZFAT発現量の低下による免疫応答への影響がみられるかどうか検討するため、スピードコンジェニック法によりC57BL6系統への戻し交配を進めた。戻し交配後のZFA+/-ヘテロ個体においてもB細胞およびT細胞の分化に大きな異常はみられなかったが、軽度の脾腫など二次リンパ組織に於ける細胞数増多傾向が観察されている。+/-細胞でさらにノックダウンによりZFAT発現量低下を誘導するべく、shRNA発現ウィルスベクターを作成した。
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