研究課題
本研究により自己免疫性甲状腺疾患の感受性遺伝子の一つとして同定されたZFAT遺伝子は、Zn-fingerモチーフとAT-hookドメインを有する転写因子をコードする。ZFATmRNAはユビキタスに発現しているが、ZFATタンパク質はリンパ系細胞に比較的特異的に発現しており、ZFATタンパク質が翻訳後修飾による制御を受けることが示唆されている。さらに、ZFATを強制発現あるいはノックダウンした細胞株における網羅的な遺伝子発現を解析した結果、ZFATがサイトカインや抗原受容体構成分子をはじめとする免疫応答に関連した一群の遺伝子発現を抑制していることが明らかとなった。生体におけるZFATの機能を検討するため、ZFAT遺伝子改変マウスを作製した。最初に、ZFATを過剰発現するトランスジェニックマウスを作製してその表現型を解析したが、免疫系細胞の分化および活性化に大きな変化はみられなかった。次にノックアウトマウスを作製したが、ホモ欠損個体は胎生9-10日で致死となり、ZFATが初期発生に重要な働きをしていることが明らかとなった。致死に至る原因についてはまだ特定出来ていない。ZFATへテロ欠損マウスではリンパ球の分化は正常だったが、軽度の脾腫など二次リンパ組織に於ける細胞数増多傾向が観察された。また、抗原受容体刺激によるB細胞の増殖克進、移植片対宿主病(GvHD)応答の遅延がみられ、ZFAT分子がB細胞の増殖ならびにTh1/Th2バランスを制御する可能性が示唆された。これらのZFATの機能を明確にするため、各種免疫担当細胞特異的にZFATを欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作成した。現在、各種Creトランスジェニックマウスとの交配が進行しており、今後リンパ球等におけるZFATの機能の解明が飛躍的に進むことが期待される。
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