本研究はゲノムシークエンシング体制を活用して、「比較ゲノム」及び「応用ゲノム」領域との連携の元に微生物ゲノムシークエンシングを実行し、微生物ゲノム解析支援及び微生物システム解明のための新たな研究基盤の構築をめざす。具体的には、1)プロセスの簡略化、コスト低減、高速化などの効率化したシークエンス技術を活用した微生物ゲノム研究の技術支援と推進、2)メタゲノム解析手法を開発し、ヒトの健康と病気に関わるヒト常在菌(フローラ)等を含めた各種環境微生物及び微生物叢の生体システムを解明する。 本年度では以下の研究を実施した。 個別ゲノム解析(支援):「応用ゲノム」及び「比較ゲノム」領域の研究グループの支援として、ヒト由来の病原性大腸菌、常在性大腸菌、ビフィドバクテリウム属細菌、ラクトバチラス属細菌などの約20株の新菌種のゲノムシークエンスとその一部を論文発表した。 ヒト腸内細菌叢:ヒト腸内細菌叢のメタゲノム解析については、応用ゲノムの班員ならびに国内研究機関との共同研究で病態患者の腸内細菌叢サンプルの収集と健常者の腸内細菌叢の経時的な変化をメタゲノム及び16S解析で進めた。また、種々の細菌叢の溶菌法の比較評価と改良を行い、高収量で高品質のDNAを調製する細菌叢溶菌法を確立した。本内容は招聘著者として2010年に出版される国際的な本「Metagenomics(仮称)」に発表される予定である。メタゲノムデータを用いた新規な高定量化細菌組成解析法の開発を行い、現在論文作成中である。 その他:水田土壌細菌叢の大規模16S解析を行い、その内容を論文発表した。 なお、上記した微生物ゲノム解析と細菌叢メタゲノム解析は新型シークエンサー(ロシュ社製454FLX)と従来のABI3730xlを併用して行った。
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