研究課題/領域番号 |
17021037
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
相原 威 玉川大学, 工学部, 教授 (70192838)
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研究分担者 |
福島 康弘 玉川大学, 学術研究所, COE助手 (00384719)
渡辺 秀典 玉川大学, 学術研究所, COE助手 (00407686)
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キーワード | 海馬神経回路網 / デンドライト / 抑制性細胞 / 逆伝播活動電位 / コーディング様式 |
研究概要 |
ニューロの情報処理において、デンドライトでのシナプス入力の時間と場所に依存した可塑性誘起が報告されている。これは、単一ニューロンにおいて新しい情報統合の可能性を示唆するものである。本研究は、海馬ニューロンの情報処理における抑制性細胞によるシャンティング効果と、ProximalデンドライトでのEPSPによる逆伝播活動電位のエンハンスにもとづくDistal部位へのゲーティング作用の可能性に着目し、ニューロンにおける時空間情報の処理とそのダイナミクスの計測を行った。そして、新たな統合的な記憶情報処理様式の基礎を示した。 具体的には、DistalデンドライトとProximalデンドライトへの2チャンネルのシナプス入力刺激を行い、STDP誘起プロトコルを適用し2入力による相互作用を光計測により調べた。結果として、逆伝播活動電位はProximalデンドライトのシナプス入力のタイミングに依存して増幅/抑圧され、Distalデンドライトへの伝播電位は増大/減少された。さらに細胞遠位部へも大きな減衰なく伝播されることが分かった。このことは、シナプス入力が逆伝播電位の増幅あるいはゲーティングの機構を行うことを示し、DistalデンドライトでのSTDP誘起による学習・記憶の情報処理に重要な役割を果たすことを示唆する。また、その結果は2入力の空間・位相(時間相関)によるコーディング様式の因果性を示すものであり、新たな学習側の基盤となると考えられる。 今後は、これらの結果を踏まえ、マルチチャネルの時空間コーディング(記憶の書き込み)へと発展させていく。ネットワークレベルの相互作用による連携した高次機能における記憶の情報処理の解明、そして理論解析およびモデル構築とその基盤となる学習側の同定にまで研究を進め、記憶に関する統合的な回路網レベル情報処理の解明を行いたい。
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