研究課題
近年、我々は、マカクザルにおいて、頚髄C4-C5髄節で側索背側部を切断して外側皮質脊髄路を遮断しても、訓練によって1-2週から1-2ヶ月で手指の精密把持運動が回復することを明らかにした。この回復には皮質脊髄路の信号を運動ニューロンに伝達する脊髄固有ニューロン系や網様体脊髄路系が重要な役割を果たすと考えられる。脊髄損傷からの機能回復過程における上位中枢の果たす役割を明らかにするために、マカクザル3頭に、手指の精密把持運動を訓練した。そしてその課題遂行中の脳活動を陽電子断層撮影装置(PET)を用いて計測した。すると、手の反対側の一次運動野と一次体性感覚野の上肢領域から頭頂連合野の活動の増加が観察された。そして、その回復初期(1ヶ月)と回復安定期(3-4ヶ月)の脳活動を計測して比較したところ、回復初期においては両側の一次運動野の上肢領域での活動の増加。安定期においては反対側の一次運動野の活動領域が拡大するとともに、両側の運動前野腹側部にも活動の増加が観測された。そして、他2頭のサルにおいてこれらの領域に、ムシモルを注入して局所的に活動をブロックしたところ、回復してきた運動に再度障害が見られたことから、これらの活動増加領域が実際に機能回復に寄与していることが実証された。さらに、これらのサルで障害肢の反対側の側坐核において機能回復過程での活動の上昇が観察された。そこでこの側坐核の活動と同じ一次運動野の活動との課題ブロックごとの血流量の間の相関を解析したところ、損傷前には相関は観察されなかったが、回復過程において側坐核と一次運動野との活動の相関が上昇することが全てのサルで確認された。さらに相関は前頭眼窩回、前部帯状回皮質などとの間でも上昇が確認された。このようにして、いわゆる「モチベーションの中枢」が機能回復過程において運動学習の中心的な役割を果たす一次運動野で機能的結合を強めることが明らかになった。
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