研究概要 |
本研究の目的として、特定の細胞種に働く形態形成分子を調べ、また可塑性に必要な抑制性介在細胞を確認し、脳機能発現の仕組みを分子生物学的および神経生理学的アプローチの統合的研究により解明する。哺乳類の中枢神経系は出生時には未熟で、生後の発達初期に自己の経験を通じて急速に脳機能を発現していく。そこで、発達段階に伴って特異的に発現する視覚大脳皮質の遺伝子群16,000クラスターのマウス完全長cDNAをマイクロアレイに並べgene chip作成と網羅的解析を行う(論文投稿中)。 (1)可塑性を抑える非蛋白コーディングRNAの同定 これまでのDNA探索の結果、多くの非蛋白コーディングRNAが明らかとなり、臨界期の終了過程に係わるエピジェネティック制御を追究した。具体的に、発達に伴うヒストンのアセチル化やDNAメチル化の低下、これらの視覚経験依存的制御を確認し、成熟動物へのヒストン脱アセチル化の阻害剤投与により、眼優位性の可塑的変化の再開に成功した。(論文投稿準備中) (2)眼優位可塑性の細胞内解析(理研・脳センター深井朋樹先生との共同研究) マウス大脳視覚野のin vivo単一細胞内記録手法を確立し、個々の細胞に対する入力・出力を同時に比較することで、眼優位性が大脳視覚野の神経細胞内で増幅されることを明らかにした。さらに、GABAA受容体の阻害剤を細胞内注入し、眼優位性の形成にダイナミックな抑制性入力の可塑性が不可欠であることが分かり、より正確な大脳局所神経回路の数理モデルの作製が可能となった。(論文投稿中)
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