研究課題
文解析における統語構造の重要性は言語学において長らく強調されてきたが、一方で文中の語句の連なりが語彙意味の連合や統計によって予測可能であるとする線形順序モデルも広く受け入れられてきた。我々は最小対パラダイムを用いて、統語課題と意味課題を遂行中の参加者の脳活動を脳磁図(MEG)により計測した。目的語・動詞(OV)文あるいは主語・動詞(SV) 文を文節毎に提示して、動詞に対する脳活動を解析の対象とした。その結果、OV文(正文) に対する有意な反応が左下前頭回三角部(F3t) において動詞提示後120-140msで観察され、この成分は統語課題に選択的であった。この早いタイミングでの左F3tの活動は、動詞の統語情報に関する予測的な効果として考えられ、連合記憶や統計的な要因では説明ができない。また、左島皮質において150-170msで観察された反応は、OV文の統語構造の処理に選択的であった。この活動は、SV文より複雑なOV文の統語構造の処理を反映していると考えられる。一方、左内側前頭皮質と下頭頂領域において240-280msで観察された反応は、それぞれ統語的非正則性と他動詞性に関連していた。これらの結果から、階層的な統語構造と課題に関連した情報処理過程で協働する複数の領域のダイナミクスが初めて明らかとなった。以上の成果は、脳機能イメージングの専門誌、Neuro Imageに受理・印刷された。
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